ムッシュ米津の家庭料理
ミロトン風グラタン・パルマンティエ

"もともとはボイルした肉の残りを薄切りにし、
リヨネーズソースと交互に重ねてグラタンにしたものです。"


より美味に手を加える工夫

フランス”ということばは
日本人の耳にいつも優雅で、しゃれた感じに響くようですが、
フランス人の持つ徹底した個人主義、
合理性
については案外知られていません。
私もしばらくパリで修行したことがありますが、
彼らのつつましさぶりには何度か驚かされました。
しかもそれが、美味礼讃と背中合わせになっているのですから
感心してしまいます。
これを端的に示している料理がミロトンでしょう。

寒い季節、あちこちの家の台所では、
ポ・ト・フーの大きななべが、ぐつぐつ煮えています。
ポ・ト・フーには、おいしいスープを取るため、
かたまりで買ってきた肉をぶつ切りにして、
惜し気もなくほうり込みます。
そのかわり、肉は全部食べてしまわないで残しておき、
翌日、薄切りにしてオーブン皿にならべ、
バター炒めしたタマネギ入りのソースをたっぷりその上にかけ、
パン粉とバターをふってグラタンにします。
これがミロトン
ケチをそのまま食卓に出さず、より美味に手を加える工夫、
ここにフランスの精神が生きています。

すき焼き用の牛肉を使って

ほら、一さじすくってみてください。
おいしそうなブラウンソースがしたたり落ちてくるでしょう。
コキールで紹介した”公爵夫人のポテト
デュセスポテトを渦巻き状に飾って、
オーブンで焼き上げた表面は、
何ともやさしい黄色をしていますね。

このミロトン風グラタン・パルマンティエという、
少し長い名前のついた料理、
もともとはボイルした牛肉の残りを薄切りにし、
底の広いパイ皿に
リヨネーズソース(薄切りにして、バターいためしたタマネギに、
ブラウンソースを混ぜたソースです)を敷き、
その上に肉を並べ。またソースをかけ、
というふうにしてグラタンにしたものです。

でも、ここでご紹介するのは、わたし流のミロトンです。
すき焼き用の牛肉を買ってきて作ってみました。
ブラウンソースも市販品を使います。


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ムッシュ米津の料理教室 *ミロトン風グラタン・パルマンティエ

"*ミロトン風グラタン・パルマンティエ " 作り方

 材料 4人前
 すき焼き用牛肉 400g
 タマネギ 400g
 トマト 300g
 すりおろしチーズ 大さじ2杯
 デュセスポテト  
 −ジャガ芋(皮をむき、小切りにしたもの) 600g
 −バター 20g
 −卵黄 1個
 ドゥミグラスソース  
 −市販のドゥミグラスソース 1缶(300cc入り)
 −ぶどう酒 150cc
 −固形スープ 1個
 −水 150cc

☆ 作り方

  1. 野菜と牛肉の下拵えから始めます。
    タマネギを3mm厚さのくし形に切り、バターで柔らかく、
    少し色づいてくるまで炒めます。
    トマトを熱湯につけて皮をむき、へたを取り、
    種を除いて粗みじんに切ります。
    牛肉に軽く塩、コショウをして、
    バターでいためておきます。

  2. 次ぎにドゥミグラスソースを用意します
    市販のドゥミグラスソース(300cc入り)1缶をなべにあけ、
    その缶の二分の一の水、
    それと同量のぶどう酒(白、赤どちらでもかまいません)、
    固形スープ1個を砕いて入れ、火にかけます。
    煮立ってきたら、火をごく弱くしてください。
    アクと脂が浮き上がってきます。(@、A)
    そのまま、少しばかり煮てから、アクと脂をていねいに
    すくい(B、C)、煮詰めてゆきます。(D)
    カップ2杯(400cc)くらいが出来上がりの目安です。(E)

  3. ソースと野菜を一緒にします
    出来上がったドゥミグラスソースに、
    炒めたタマネギ、トマトを加え、1〜2分煮て、
    塩、コショウで味をととのえます。

  4. 仕上げです
    グラタン皿の底に、
    タマネギ、トマト入りのソースを少し敷き、
    牛肉を平らにのせ、残りのソースをかけます。

  5. 次ぎにデュセスポテトです
    ジャガ芋の皮をむき、小切りにして茹でます。
    15〜17分くらいかかります。
    ざるにあけて水気を切り、なべに戻して、弱火にかけ、
    水分をとばし粉ふきイモにします。
    これを熱いうちに裏ごしして、なべに戻し
    卵と、バターを混ぜ、塩、コショウをして、
    ごく弱火にかけ、かき混ぜながら火を通します。

  6. グラタンにポテトを飾って焼きます
    小さい花形の口金をつけた絞り袋に入れて、
    ミロトンの中央から、渦巻き状に
    すきまなく絞り出してゆきます。
    最後に、卵黄に少し水を加えて溶いたものを、
    ハケでポテトの表面に塗ります。
    こうすると焼き上がったとき、きれいな黄金色に仕上がるのです。
    すりおろチーズをふりかけ、バターの小片を散らして、
    220度位のオーブンで、8〜10分間、
    こんがりと焼き色がつき、中まで熱くなるように焼きます。


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*後書き
 デュセスポテトは、渦巻きにしなくて、
 網目のように飾ってもいいかもしれませんね。
 市販のドゥミグラスソースをおいしくする方法、
 是非覚えておいてください。何もかも本格的にと考えると、
 フランス料理も難しくなりますから。
 ポイントだけは決して手を抜かないで、
 あとはあれこれ工夫
なさることも必要ですね。
 このドゥミグラスソースに、
 薄切りにしたマッシュルームをバターでいためて入れると、
 とても味のいいステーキ用のソースになりますよ。

 ジャガ芋は、16世紀の半ば、
 南米アンデス山地を探検していたスペイン人が、
 現地人たちが食べているのを見て、
 食料になることを知ったのが最初だとされていますが、
 ヨーロッパでの栽培の歴史は決して平坦ではなかったようです。
 1787年、大凶作のとき、
 この料理名のついているパルマンティエ(1737〜1812)が、
 当時すでにドイツでは利用が盛んだったジャガ芋の栽培を説き、
 国王の許可を得て砂原に開墾を始め、
 大成功をおさめました。
 ジャガ芋の白いかれんな花束国王(ルイ16世)に献上
 国王がその花を上着のえりに差されたので、
 それが流行したと伝えられています。
 この功績をたたえて、ジャガ芋を使用した料理にはしばしば、
 パルマンティエの名前がささげられています。


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文・写真(イメージ写真)提供:ひかりのくに株式会社

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