ムッシュ米津の家庭料理
詰め物をしたローストチキン クランベリーソース添え

詰め物をしたローストチキン

アメリカ映画で、感謝祭に家族が集まって食事をするというシーンをご覧になったことがある方も多いと思います。感謝祭は、収穫を神に感謝するという意味合いを持つアメリカやカナダの祝日でしたが、現代では家族や友人が集まって食事をする、家族行事のひとつとなっています。アメリカでは11月の第四木曜日が感謝際の祝日にあたります。

そして、この感謝際のメインディッシュが、詰め物をした七面鳥です。

余談ですが、日本の勤労感謝の日(11月23日)は、戦前、収穫を祝う祭日だった新嘗祭(にいなめさい)の日を、1948年( 昭和23年)に、「勤労をたっとび、生産を祝い、国民互いに感謝しあう」ことを趣旨として、制定されたのだそうです。

今月は、日本でも手軽に楽しめるトリを使って作る「詰め物をしたローストチキン」をご紹介しましょう。勤労感謝の祝日やクリスマスなど、家族全員でテーブルを囲んで、楽しんでいただけると嬉しいです。

ナイフを持てるのは、一家のあるじ

トリの丸焼き。そう聞いただけで、じゅうじゅうと肉汁の焦げるにおい。きつね色の焼きはだが目に浮かびませんか。

トリ、七面鳥、アヒル、カモ、ホロホロ鳥ばどの丸焼きを食卓で切り分けるのは、西欧では最高のもてなし。ナイフを持てるのは、一家のあるじと決まっています。

なかでもトリはなかなかのごちそうです。フランス語のヴォラーユ(仏:Volaille)は家禽(かきん)の総称ですが、メニューの上ではトリを指します。大きさ、部分によって適した料理法がありますので、メニューには、トリの胸肉を使えば、「シュプレーム・ドゥ・ヴォラーユ(仏:Supréme de volaille)」と書くわけですね。

フランスの主婦たちは、トリなら1羽丸ごと、肉やハムはかたまりで買ってきて、骨の最後のひとかけらまで上手に料理します。魚一匹自分でさばけないのに、トリなんてとあきらめないでください。店に予約をしておけば、注文通りに下ごしらえしてくれます。あとは順序通り、ていねいに仕上げていけばいいのです。

ちょっと豪華にパーティー気分

近ごろはトリも促成養鶏とでもいいましょうか、出来るだけ効率のよい方法で飼育するように考えられています。でも、かたちを大きくしても、味はもうひとつのってきません。それだけに料理に工夫が必要です。

今回ご紹介する「詰め物をしたローストチキン」は、トリ一羽のおなかを抜き、中にベーコン、タマネギ、ウィンナーソーセージなどを詰めてオーブンで焼きます。

材料(4人前)
★ローストチキン
若トリ:1.2Kg前後のもの
(内臓を抜いたもの)
1羽

バター
大匙1杯位
★詰め物(出来上がり約300g分)
タマネギ
50g
ベーコン
25g
生パン粉
100g
ウインナーソーセージ
75g
チキンレバー
75g
ベイリーフ(月桂樹の葉)
1枚
オールスパイス
少量
バター
大匙1杯
50cc
★ローストチキンのソース
フォンドヴォー(*1)
(市販の缶詰300g入り)
1缶

コーンスターチ
小匙2杯

  1. 水300ccにチキンの固形スープ2個を加えて煮溶かしたものでも可。
★付け合わせ
インゲン
適量
フライドポテト
適量
プティトマト
適量
クランベリーソース(缶詰)
1缶

詰め物をしたローストチキンの作り方

A.トリの下ごしらえ

  1. ローストチキン 写真1 下ごしらえトリの皮を破らないように気をつけながら、首を付け根から、脚は間接より5〜6cm先で切り落とします。(写真1)
  2. 乾いた布巾で、トリの表面、腹の内部共に、よく水分を拭き取っておきます。

B.詰め物を作る

  1. ベーコンを細かく切り、大匙1杯のバターで、ベイリーフと共にいためます。
  2. タマネギとチキンレバーをみじん切りにして加え、火が通るまでいためて、ボールにあけます。
  3. 厚さ5mmの輪切りにしたウインナーソーセージ、湯50cc、生パン粉を加えます。
  4. 塩小匙1/2杯、こしょう少量、オールスパイス小匙1/4杯で味を付け、よく混ぜます。

C.トリの中に詰め物を詰める

  1. Bの詰め物を、トリのお尻から中に詰めます。(写真2)
  2. 詰め口に竹ぐしか妻楊子を縫うように刺して閉じます。
  3. 胸の皮の先端は引っ張って背のところへ妻楊子(爪楊枝)でとめます。
  4. 脚はももを胸に引き寄せるように、2本合わせてタコ糸で縛り、手羽先を形よく整えます。(写真3)

ローストチキン 写真2  詰め物を詰めるローストチキン 写真3 脚を縛る

D.詰め物をしたトリをローストする

  1. ローストチキン 写真4 トリにバターを塗るオーブンを220度に温めます。
  2. バター大匙1杯を溶かして、トリの表面にぬります。(写真4)
  3. オーブン皿にサラダオイルを塗り、トリを胸を上にしてのせます。
    注意:詰め物に塩味がついているので、トリには塩、こしょうはしません。
  4. 焼くのに50〜60分かかります。
    220度に温めたオーブンの下段に入れ、40分焼きます。
  5. 全体にきれいな焼き色がついていれば、温度を150度くらいに落として、もう15分焼きます。
  6. トリのももの厚いところに竹ぐしを刺して、流れ出てくる肉汁が透明ならばできあがりです。
    もし血の混ざったピンク色の肉汁が出ればそのまま、7〜8分焼きます。

E.ソースを作る

  1. トリを焼いた天板の焦げ付きを使って、ソースを作ります。
    トリを焼いた天板の脂を捨て、(その天板の中に)フォンドボーを半分くらい入れて(天板を)弱火にかけ、焦げ付きをこそげ落とし、鍋に漉し入れます。
    (ローストしたトリの風味をソースに移す大事な作業です)
  2. 塩、こしょうで味を付け、コーンスターチを同量の水で溶いて入れ、少し濃度をつけます。

F.付け合わせを作る

  1. インゲンをバターで炒めます。
  2. フライドポテトを作ります。
  3. プティトマトは、湯むきして、電子レンジで、30〜40秒温めます。
    お好みで生のままでもOK。

G.盛りつけ方

  1. ローストチキン 写真5 トリの詰め物を掻き出すトリの詰め物をかき出します。(写真5)
    焼き上がったトリをお皿か天板に移し、さわれるくらいになったら、タコ糸、妻楊子をはずし、トリの詰め物をスプーンでかき出します。
  2. 大皿にローストチキンをおきます。
  3. チキンの前にかき出した詰め物を盛り、付け合わせの野菜を添えます。(ページ上部のイメージ写真参照)
  4. ソースは別の器に入れて出します。
  5. 一度焼き上がりの姿を見せてから、台所に下げ、トリを切り分けます。
  6. トリの切り分け方
    写真6:ももの付け根にぐるっと包丁を入れ、両足をはずします。
    写真7:トリを上向きにして、
    写真8:中央の胸の骨の両側に包丁を入れ、
    写真9:胴の骨にそって切り開いてはずします。

    ローストチキン 写真6 切り分け方1ローストチキン 写真6 切り分け方2ローストチキン 写真6 切り分け方3ローストチキン 写真6 切り分け方4

  7. 切り分けたトリを大皿に戻し、Eで作ったソースと、クランベリーソースを添えて、食卓に出します。

食事のあとのひと工夫

残ったトリのガラを小さくたたき切ってなべに入れ、水5カップ(1000cc)と共に煮立て、あくをすくいながら、静かに1時間煮て、こします。少し濁っていますが、塩、こしょうで味を調えれば、チキンブロスと云うスープが出来ます。細ネギを刻んで散らすと良いでしょう。

食材について

オールスパイス(英:All spices・仏:tout- épice)
ジャマイカペッパー・ピメントともいい、実を乾燥させた香辛料。ナツメッグ(ニクズクの種子)・シナモン(肉桂)・クローブ(丁字)とを合わせたような風味もつところからオールスパイスという。
参考文献:改訂食品辞典真珠書院

フォンドヴォー(仏:Fond de veau)
砕いた仔牛の骨やくず肉と、小切りにした野菜をいためたものを、水と共になべに入れて煮立て、弱火にして5−6時間、静かに煮てこした薄茶色のブイヨンの事です。

用語解説

家禽(かきん)(仏:Volaille)
鳥卵および鳥肉を食用する目的で飼養する鳥類のこと。

文・写真(イメージ写真)提供:ひかりのくに株式会社
レシピ・写真提供:暮らしの手帖社(「暮しの手帖」4世紀1号 2002年12、1月号より)
撮影(写真1〜9):山口卓也氏

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