フランス料理博物館 プレジール・ドゥ・ラ・ターブル

Vol.48  2012年11月


フランス料理博物館 plaisir de la table

(プレジール・ドゥ・ラ・ターブル)は、

試行錯誤をくり返しながら、内容の充実に取り組んでおります。

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今日は「お酢」のお話しです。

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バルサミコ酢

イタリアの特産で、アチェート・バルサミコ (Aceto Balsamico)は
短縮してバルサミコとも呼ばれるます。
なお、イタリア語でアセトAceto
バルサミコBalsamico芳香があるという意味です。

モデナ産のバルサミコ酢。 DOP専用のこのボトルは
ジョルジェット・ジウジアーロによるデザイン。
バルサミコ酢(バルサミコす)は果実酢の一種。
原料がブドウの濃縮果汁であることと、
長期にわたる樽熟成が特徴です。

色は茶色を濃くした黒色で、その名の通り独特の芳香があり、
オリーブ・オイルとともにサラダにかけるなど
イタリア料理の味つけや香り付け、隠し味に使われます。
ほかの食酢にはない甘味があるため、
デザートの味付けやトッピングに使われることもあります。

DOPの指定とは
デノミナツィオーネ・ディ・オリージネ・プロテッタ
(イタリア語:Denominazione di Origine Protetta)は、
イタリアにおける原産地名称保護制度のことです。
DOP、D.O.P.と略表記され(ディ・オ・ピーと読まれます)。
イタリアワイン、チーズなどの伝統的食材に対し、
品質管理と産品保護のため地域を指定した上、
基準をみたすものにのみ特定原産地の名称を付して
販売することを許可する制度です。

製品の格付け
アチェート・バルサミコ・トラディツィオナーレ
トラディツィオナーレに準ずる製品

アチェート・バルサミコ・トラディツィオナーレ
(aceto balsamico tradizionale)。
伝統的なバルサミコ酢は最低12年の熟成や、原料のブドウの種類
その他細かな製法が法律で定められているものです。
エミリア・ロマーニャ州のモデナまたはレッジョ・エミリアで作られた
12年物・25年物の2種類のみのトラディツィオナーレだけが
DOPの指定を受けることができ、日本では特にモデナ産が有名です。

モデナ産トラディツィオナーレの中でも25年以上の熟成を経たものは
ストラヴェッキオStravecchio、たいへん古いと呼ばれ、珍重されています。
ストラヴェッキオの中には50年や100年などの長期熟成を経たものもあります。
また、レッジョ・エミリア産のトラディツィオナーレも、
12年以上・18年以上・25年以上の3段階に分類されています。

これらトラディツィオナーレは高価なため、
高級レストラン以外で料理の調味に使われることは少なく、
また風味をできるだけそのまま生かすため、
火を通す料理に使われることは殆どありません。
中には健康のために陶器のスプーン一杯をなめるだけの
超貴重品として扱われるものもある程です。
高級料理店ではジェラートやイチゴにかけて供することもありますが、
かなり高額なエクストラ・チャージを要求される事があります。

トラディツィオナーレに準ずる製品で
トラディツィオナーレとほぼ同じ材料や工程ながら、
熟成期間だけが短い6年もの・8年ものなどもあります。
当然これらはトラディツィオナーレを名乗ったり
DOP指定を受けたりすることはできず、ラベルの表記は
アセトバルサミコaceto balsamicoとなります。

普及品は、伝統的な生産方法によるバルサミコ酢は、
大衆的なレストランや一般家庭で使うには高価になりすぎるため、
熟成されていないブドウ酢を主体に着色料・香料・カラメルなどを添加し、
大量生産によって作られた普及品が市場に出回っています。

この普及品は本来の製法で作られたものではないため、
正確にはバルサミコ酢ではない擬似商品であります。とはいえ、
味をできる限り高級品に近づけるため材料や工程にこだわったり、
高級品には及ばないにしても3〜5年程度の比較的長い熟成を経たものも多くあります。
そのため、先述のトラディツィオナーレやそれに準ずる品に比べると
格段に安いものの、通常の食酢と比べれば高価になるので、
決して粗悪品というわけではありません

調理法によっては必要量を小鍋で弱火にかけて煮詰めてから使うことで、
普及品でもより高級品に近い味が得られます。
逆にサラダなどのあっさりした料理では、
熟成が浅く酸味が強い酢であることを逆手にとって、
通常の酢に近い使い方をすることもできます。

それではバルサミコ酢どの様にして出来るのでしょうか。
材料になるブドウは、
トレビアーノの白ぶどう ランブルスコの赤・黒ぶどうなど

製法は
大樽にぶどうを入れてモストmosto=搾り汁をとります。
モストを大鍋に移して煮詰めていくと泡=アクが出ます。
アクを大網ですくい取って濁りのない液体に煮詰めます。
これがバルサミコ酢の大元になる
煮詰めたモスト・コットmosto cotto=ぶどう液です。

煮詰めたぶどう液を母樽botte madreと呼ばれる大きな樽に移し入れます。
通常5〜7段階にサイズが変わる樽の一番大きな樽に、
母樽のぶどう液が注入されます。

一定の時期になると、一番大きな樽から順繰りにより小さな樽へ
一定の量の発酵したぶどう液が移されます。rincalzo
樽には樫・栗・桜・桑・トリネコなどが順に使われ、
木材の芳香をバルサミコ酢に移します。
そして一番小さな樽から取れるわずかなものが、
バルサミコ酢としてようやく日の目を見るわけです。
100キロのぶどうから生まれるのは、約2リットルのバルサミコ酢。
気が遠くなるような話ですね。

こうして、最低12年の熟成を要したもの、
及び葡萄の種類や醸造法など定められた法律に則ったものが、
アチェート・バルサミコ・トラディツィオナーレaceto balsamico tradizionaleです。
数ヶ月の熟成を経て加工されたお手軽なものを
アチェート・バルサミコ・ディ・モデナaceto balsamico di modena
熟成期間12〜24年のものをアッフィナートaffinato
25年以上熟成させたものをエクストラヴェッキオextravecchioと呼びます。

その昔バルサミコ酢をねかせる蔵の鍵は、
通常は70〜80歳代の家長が肌身離さず持ち歩いていたので、
家族は勝手に出入りできませんでした。バルサミコ酢は秘宝であったわけですね。
曽祖父から祖父へ、祖父から父へ、父から娘へ、娘から息子へ、
息子からその子へと、各々の家のバルサミコ酢は絶えることなく継承されてきました。

それでは、簡単なサラダをひとつ

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トマトとモッツアレラチーズのサラダ
INSALATA DI POMODORO E MOZZARELLA

良く熟した大きめのトマトを半分に切ります。
更に7〜8ミリの半月形に切って、お皿に円形に盛ります。
サラダ菜のルッコラをのせ、
小角切りにしたモッツアレラチーズを7〜8個周りに添えます。
味つけは食卓で、好みに、塩、胡椒をし、
バルサミコ酢を振りかけて召し上がって下さい。


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☆ お知らせ

 ムッシュ米津の家庭料理のページでは
 『オイルフォンデュー』
 作り方をご紹介しています。

 http://www.plaisirdelatable.jp/cooking/index.html

 卓上のコンロに揚げ油を熱くして、牛肉や野菜を
 串に刺してあげて食べる「オイルフォンデュ」は、
 「チーズフォンデュ」と並び、スイスの代表的な料理です。

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 フランス料理に役立つ「フランス料理の食材・機材」では、
 料理に使っていただきたい最高の食材と機材をリンクで
 ご紹介しております。

 http://www.plaisirdelatable.jp/food/index.html

 今月は『きくいも』をご紹介しております。

こちらのコーナーも、ぜひご活用ください。

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