フランス料理博物館 プレジール・ドゥ・ラ・ターブル

Vol.49  2012年12月


フランス料理博物館 plaisir de la table

(プレジール・ドゥ・ラ・ターブル)は、

試行錯誤をくり返しながら、内容の充実に取り組んでおります。

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今回は世界三大珍味「フォアグラ」のお話しです。

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フォアグラ

世界三大珍味として有名な食材。
ガチョウや鴨などに沢山のエサを与えることにより、
脂肪肝を人工的に作り出したものです。

フランス語で「フォア(foie)」は「肝臓」を、
グラ(gras)」は「脂の多い、肥大した、太った」を意味します。
文字通りに訳せば、「フォア・グラ」は「脂肪肝」となります。
ただし、疾患としての「脂肪肝」ではありません。

フォアグラの生産は強制給餌(ガヴァージュ 仏: gavage)を伴うため、
動物虐待に当たるとして生産や販売に異を唱えるものもあります。

古代ローマ人が、干しイチジクをガチョウに与えて飼育し、
その肝臓を食べたのが始まりと言われています。
大プリニウスの『博物誌』によれば、古代ローマでは、
ガリアからもたらされたガチョウに強制肥育を施して、
食材としていたことが記録されています。
これにある美食家がさらに工夫を加えて、無花果で肥育させた上に、
肥大した肝臓を蜂蜜入りの牛乳に浸して調理する技法を
発案したとも伝えられています。

ローマ帝国崩壊後にこれらの技法はいったん衰退しましたが、
徐々に復活し、ルネサンス期にはフォアグラ生産業が定着して、
食材として認知されるようになりました。
フランス革命前までは、フォアグラの製造にはガチョウだけではなく
ニワトリなども用いられましたが、19世紀になると、
ガチョウがフォアグラの素材の定番として定着しました。
ガチョウは牧草などの粗食で大きく育つため、
あまり地味の豊かでない土地で多く飼育され、
またそうした地方には17世紀に新大陸からトウモロコシが導入されて、
農業生産がようやく向上しました。
今日のフランスの主要フォアグラ産地は、このような地理的、
歴史的条件を背景とし、ガチョウ飼育農業とトウモロコシの出会いの上に
成立したのです。現在ではガチョウ以外に鴨のフォアグラも作られており、
野生的な味がガチョウのものと異なるものとして評価されていますが、
火を通したときに溶けやすいこともあって、
料理法の許容範囲はガチョウのものほど広くはありません。
なお、ここでいう「」とは野生のマガモを家禽化したアヒルのことですが、
フランス料理用語としては野生のカモと
家禽のアヒルを訳し分けない慣行がある為、以後も「鴨」の表記を用います。

製法

強制給餌の様子。今日フランスでフォアグラ用に供されるガチョウは
Oie de Toulouse(オワ・ド・トゥールーズ、トゥールーズのガチョウの意)」
などの大型品種で、初夏に生まれた雛を野外の囲い地で
牧草を餌に十分運動させて育て、基礎体力を付けさせます。
夏を越して秋になると狭い場所に閉じ込めて運動できないようにし、
消化がよいように柔らかくなるまで蒸したトウモロコシを、
漏斗(ガヴール)で強制的に胃に詰め込む強制給餌(ガヴァージュ)を
1日に3回繰り返します。これを1ヶ月続けると、
脂肪肝になった肝臓は2kgに達するほどに肥大し、
頭部と胴体を水平にする姿勢しかとれなくなって仕舞います。
この段階のガチョウをしめて肝臓を取り出し、余分な脂肪、
血管、神経などを丁寧に除いてから、
冷水に浸して身を締めたものがフォアグラであります。

鴨の場合、ガチョウにはない素嚢(そのう)と呼ばれる
食道にある袋のような器官に餌が多量に入っていると、
消化の速度が上がるという特性を持っています。
そのため、人の手によるガヴァージュを行う前
10日間ほど好きなだけ餌を食べさせるプレガヴァージュを行い、
効率よくガヴァージュを進めます。給餌は一日2回で、期間は3週間です。
また、近年では機械化された飼育場ですりつぶしたトウモロコシを自動的に与え、
2週間ほどでガヴァージュを終わらせる速成法もありますが、
素嚢でトウモロコシが発酵してしまうため、フォアグラの質は劣ります。

フォアグラを取り出した残りの部分は、
肥育によって多量の脂肪が蓄積されています。
産地ではこのことを利用して、ガチョウ自身の脂肪で
残った肉を油煮にして保存食料のコンフィを作ります。
フランスの地方料理は多用する油脂の種類で特徴付けられ、
例えばノルマンディーやブルターニュ地方はバター文化圏
イル・ド・フランス地方はラード文化圏ですが、
フォアグラの主要な産地のひとつであるラングドック地方は
ガチョウ脂肪文化圏に属しています。
フォワグラを取った後、血はサンゲット「La sanguete」と呼ばれる腸詰めに、
首の皮は、骨を取り除いてフォワグラで風味付けをしたソーセージ
クー・ドワ・ファルシ「Cou d'oi farci」として加工されます。
または、飾り、ガペン、爪楊枝、羽毛布団に利用され、
脳髄、砂肝、心臓、肝臓も調理されて珍重されています。

調理法

パテテリーヌにし、ブリオーシュ(甘みのあるバターパン)
を添えてて食べるか、トリュフ入りのパイ包み焼きの様なパイ料理
素材としてもよく使われます。
フォワグラのソテートリュフをのせたステーキは、
ロッシニー風トゥルヌドステーキと呼ばれ、
伝統的なフランス料理のひとつです。
フランス人の多くにとってはクリスマス新年前夜の晩餐
(レヴェヨン、Reveillon)などのご馳走です。

主な産地はフランスです。世界のフォアグラの生産量
西暦2000年で約1万8000トンでしたが、
そのうちフランス産1万5300トンにも及と云われます。
フランス国内では、南西部のペリゴール地方現ドルドーニュ県)と
ランド県が主産地で、ガチョウと鴨の両方のフォアグラが生産されています。
南西部全体での生産量は、フランスの生産量の75%を占め、
また、アルザス地方のストラスブールやラングドック地方のトゥールーズも、
産地としてよく知られています。
ハンガリードナウ川西岸(ドゥナーントゥール、Dunantul)でも
昔からフォアグラの生産が行われており輸出も盛んです。
不足分は、オーストリアなどからの輸入品でまかなわれています。
ガチョウよりも鴨の方が飼育が楽で、病気にも強いことから、
今日では鴨のフォアグラの生産量は増加傾向にあります。

上記のように、ガチョウや鴨に飼料を大量に無理矢理食べさせて
脂肪肝を発症するまで肥大させることで製造することから、
古くから不自然な食材としてこれを否定的にみる議論も見られました。
例えば、昆虫学者のファーブルも、嫌って食べなかったことが伝えられています。


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☆ お知らせ

 ムッシュ米津の家庭料理のページでは
 『ミ−トロ−フ公爵夫人のポテト飾りと
  グリ−ンピ−ス・人参・蕪のフランドル風煮込み』

 作り方をご紹介しています。

 http://www.plaisirdelatable.jp/cooking/index.html

 <公爵夫人のポテト、ポム・デュッセス>と云う
 名前の付いた料理があります。
 グラタンを作る時、皿の縁に絞るあのポテトです。

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 フランス料理に役立つ「フランス料理の食材・機材」では、
 料理に使っていただきたい最高の食材と機材をリンクで
 ご紹介しております。

 http://www.plaisirdelatable.jp/food/index.html

 今月は『くわい』をご紹介しております。

こちらのコーナーも、ぜひご活用ください。

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